【雑学】お酒について知っておきたいこと

1.保管について、防腐剤の使用は?

日本酒は、製造・貯蔵の過程で防腐剤・酸化防止剤をまったく使わない。醸造当初に酸化防止・防腐のために亜硫酸(2酸化硫黄)を加えるワインよりもデリケートな酒であることを認識しておきたい。(一部ワインには防腐剤としてソルビン酸も添加される)
「開栓後の清酒が台所の片隅に室温下で置かれ、ワインが冷蔵庫入れてある光景をしばしば見かけるが、むしろ清酒を冷蔵すべき」(清水健一「ワイの科学」講談社)なのである。

光、温度、時間、空気(酸素)による品質の劣化には細心の注意を払う必要がある。
特に日光に曝すのは厳禁である。数時間でとんでもない液体に変わってしまう。黄変し、「日光臭」が出る。
明るい日光のイメージから、太陽の恵みを吸いこんだ洗濯物の香りかと早トチリしてはいけない。別名を「けもの臭」という誰もが不快に感じる異臭である。
紫外線を持つ蛍光灯は、白熱電球の光と比べれば、何倍か何十倍か、良くない。

酒に限らず食品の品質を悪くするのは酸素である。酒が空気に触れる面積を出来るだけ小さくしたい。そして空気が酒に入り込まないよう余り動かさないこと。

冷暗所(よく使われる言葉だが語感がひどく障る)、できれば冷蔵庫に保管したい。小生は一升瓶の開栓後はコンパクトに納まる容器に移し冷蔵庫に入れている。空いた500mlPETボトルが収まりやすい。

室温で1年以上置いたもの(夏の暑い時期を一度以上越したことになる)は開栓前でも飲もうと思わない方がよい。いかに高い酒でも料理用にまわす。むしろ高い酒(吟醸酒など上級酒)ほど品質の落ち方がひどい。日本酒の賞味期限は1年、と心得たい。
料理用でも怪しいな、と感じたら捨てる。早く賞味しない報いである。

問題は、流通段階での扱われ方である。輸送、問屋段階はなかなか分からないので、歯がゆい。
日の射し込むところに酒を置いてある小売店は、もちろん、失格。ワインなどを篭や格好のいい器に入れて外に出している店を見かけるが、酒を売る商売人がやることではない。絶対に買ってはいけない。
奥の薄暗い所にあればまだいい、ほこりをかぶっていなければ―、だが。
やはり本当は「普通酒」でも冷蔵庫に置いてもらいたいもの。

よく売れる店で買うのも対応策のひとつ。よく売れる店はそれだけ新しいお酒が置かれている。新鮮さが大事なのは、生鮮食料品に限らない。

紙パック入りのお酒は、一升壜の存在感には到底敵わないが、「光」対策としては着色壜より数段有効である。冷蔵庫への収まり具合もいい。
空きパックを保管容器として利用するのも テ である。ただしよく洗って前の酒の香りを落としておくように。

サルチル酸を代表格とする防腐剤は、悪酔いする、頭が痛くなる、という直接効果?に加え、健康、特に肝臓に悪影響があるとして、昭和48(1973)年に禁止されている。
日本酒の殺菌はもっぱら、貯蔵前と瓶詰め時の2回に行われる「火入れ」と呼ばれる低温殺菌に依っている。
その火入れも一部の酒では、味・香りの特性を生かすため、行われない。 (「生酒 」では貯蔵前と瓶詰め時ともに火入れしない、 「 生貯蔵酒 」では貯蔵前の火入れはやらない、 「 生詰め 」では瓶詰め時は火入れしない)
それでもかなり良い品質を保てる。日本酒の醸造法の神秘である。
しかし、「生」は長くとっておいてはいけない酒である。生ビールは樽詰め後は何日かで売り切りますよね。
日本酒は大事にとっておかず、おいしいうちに飲りましょう。

2.どんな日本酒があるのか  ――日本酒の分類

どんな酒がうまいか、は、いわば究極の質問であるが、これが多いのである。
いろいろな観点から、解きほぐしてゆきたい。まず、どんな日本酒があるのか、から。

特定名称酒」という語を聞いたことはないだろうか。
日本酒は、原料米の精米歩合とアルコール添加量、それに製造方法によって、基本的に、次の基本の「特定名称酒」3種と、それ以外の 「普通酒」とに分けられる。

特定名称酒 本 醸 造 酒
純 米 酒
吟 醸 酒
普    通    酒

基本の「特定名称酒」3種はそれぞれ、枝分かれして――

 本醸造酒は、 さらに上位の条件が満たされれば、 ・特別本醸造酒
 純米酒が、 さらに上位の条件が満たされれば、 ・特別純米酒
 吟醸酒は、 アルコール無添加だと、 ・純米吟醸酒
 吟醸酒が、 さらに精米歩合を下げれば、 ・大吟醸酒
 大吟醸酒が、 アルコール無添加だと、 ・純米大吟醸酒

となる。
基本の3種類とあわせて、8種類が「特定名称酒」である。
特定名称酒は、一般に上等で美味しいといわれる日本酒である。上級指向の風潮の中にあって日本酒全体の3割程度まで比率が上がってきている。

この8種類の特定名称酒以外は、「普通酒」(一般酒)である。

それぞれに特徴があり、その特徴を知っておく必要がある。値段の高い酒が常にいいとは限らない。特に純米酒については好みも含めて吟味して選びたい。
食事・肴はなにか、温度は燗・常温・冷やす、のどれ、酒器も気になる。いつ・誰と、もあろう。
一言でいえば、とは残念ながら申し上げられない。

3.それぞれのお酒の味や香りの特徴は  ――特定名称酒と普通酒

お酒は、原料、造り方、熟成期間、保管方法、飲用時の温度、肴・つまみ、などによって、非常に多くの味わいを持つ。
日本酒の特徴を知り、TPOにあったお酒選びが出来るようになりたい。
お酒の種類とそれぞれの特徴を簡単に見てみよう。

「特定名称酒」から。

本 醸 造 酒
精米歩合70%以下の白米を使用して醸造した酒。仕込みの最終段階で醪(もろみ)に白米重量の10%以下のアルコール(度数95度換算。白米1トンにつき約120リットル以下)を加える。糖類等の添加はしない。純米酒にアルコールを加えたものではない。
純米酒に比べ香りがありやや軽い感じの味の酒になる。
酒肴はとくに選ばず幅広く、冷用から熱燗までいろいろな飲み方ができ、値段もまあまあで、スタンダードな「いい酒」。
「本醸造」でなければ 「ナニ醸造」なんだといわれそうだが、日本酒にはこういう普通の感覚での語意とは合わない表現が多い。
例えば「生」何とかいうのは、火入れを一度もしない本当の「生酒」以外に使うのはおかしいと思うが、とくに「生貯蔵酒」という紛らわしいものがかなりの勢いを持ってきており、しっかり見極めたい。

純 米 酒
原材料が米と米麹だけのお酒(水は大事な原材料だが、ここでは措いておく)で、醸造アルコール・糖類等の添加はしない。米は精米歩合70%以下の白米を使用。
米の風味が生き、造り方によって多くの個性的な酒がある。コクがありやや酸味がかったものが多い。この種の酒には甘口の酒はあまりない。
「わしは純米酒しか飲まない」という方も居られるが、いいものはいいが(当たり前)、蔵により年により当たり外れが結構ある。信念(信仰?)だけで選ばないように。
「米だけの酒」というのが出ている。名前からごまかされやすいが、多くは純米酒ではない。精米歩合が高い(あまり削らない)とか、くず米を使っていて風味が落ちるとか、であるので、くれぐれも米だけならば「純米酒」などと常識的な国語解釈で間違わないように。「純米酒」というのは術語である。ただし、本当の「純米酒」もまれにあるので、表示を確かめてください。

2004年1月1日から「清酒の製法品質表示基準」改正されました。
特に純米酒については、「製法品質の要件」のうち要素としては極めて大きい「精米歩合70%以下」が削除されました。
ですが、無論基準が緩くなったわけではありません。
特定名称酒は、こうじ米の使用割合が15%以上のものに限るものとすることになったからです。逆に言うと、悲しいことですがこれ以下の麹しか使っていなかった純米酒が結構あったということです(その代わりに糖化酵素を入れていたということ)。
もうひとつ、特定名称酒については精米歩合を併せて表示することが義務づけられたことです。70%以下であれば今までと同じですが、1%単位で表示をすることになります。他の条件さえ満たせば80%でも、92%(普通に食べるご飯用)でもいいわけです。要するに、酒造家(時に杜氏)の考えひとつで品質がすっかり変わるということです。
これまでも知ったかぶりの純米酒信仰を咎めてきましたが、正直、やっぱりそうだったか、という感想を否めません。純米酒はこれからも特に選別が必要な酒です。

吟 醸 酒
精米歩合60%以下の米で、「吟醸づくり」といって長期間低温でゆっくり発酵させ造られる酒。杜氏の技術の見せどころ、である。フルーツのような吟醸香が特徴で、味はやや辛口が多いが香りにより甘さを感じるものもある。酸味は少ない。
香りを重視する造り方(「香り吟醸」)から、近年、しかっりした味を追求する「味吟醸」に移りつつある。香りが少ないナなどと言って、恥をかかないように。
お酒の最高峰*にあり、常温か冷やして飲む。体温ぐらいのぬるいお燗なら香りを強くする効果があるが、お奨めしない。

肴は、この酒の華やかな香りと清涼で爽快な味わいを壊さないようなものにする。淡白な料理がいい。濃い味付けの料理や脂っこいものは合わない。
香りの強い「香り吟醸」は食前酒にもいい。

大 吟 醸 酒
精米歩合50%以下の米を使う以外、基本的には吟醸酒と同じである。
他には、吟醸酒が「固有の香味および色沢が良好なもの」であること、に対し、大吟醸酒は「固有の香味および色沢がとくに良好なもの」という違いがあるだけである。
尤も、杜氏の最高の技術で造りあげる酒の芸術品であり、吟醸香、味わいが吟醸酒より優れている(とされる)。もともとは酒の品評会出品用の特別仕様のお酒。
吟醸酒と同じく、常温か冷やして飲むのがいいが、やはり10℃以下にキリッと冷やして、お酒そのものを賞味するのが、よい。冷やしすぎると折角の香りがなくなるので、注意。
お燗は一度だけテストしてみる以外はやめた方がいい。勿体ないし旨くもない。
華やか香りは上立ち香も口中香もいい。よくワインのような香りというが、大吟醸酒がずっと上等な香りだ。
ほかの余計な味や香りはこの酒の本質を壊すので、この酒には、肴はいらない。じっくりお酒を味わったあとで食べる。そう、少量いただく食前酒には格好である。
強いて言えば、癖のないさっぱりしたもの、爽やかな風味の軽い料理などは、あってもいい。
飲みすぎていない食後に、ゆっくり香りを楽しみながら飲るのもゆったりする気分で悪くない。だが、食事が済んだ後に「高い」日本酒を頼むのは訝られることが多い。家で飲ろう。

純 米 吟 醸 酒・純 米 大 吟 醸 酒
吟醸酒、大吟醸酒で、純米酒仕様により作られたものを、純米吟醸酒、純米大吟醸酒、という。
すなわち、精米歩合60%以下(純米大吟醸酒は50%以下)の米と米麹だけで造り、醸造アルコール・糖類等の添加はしないもの。しかし「純米」だから最高級というわけではない。
ここで ’??’と思った人は、素質がある。
吟醸酒や大吟醸酒は、高価でいい酒だが、本醸造酒と同じ条件(原料米重量の10%以下)でアルコールが添加されているのである。同じ蔵の一番高価なのはアル添の大吟醸酒であることが多い。
アルコール添加の意味については功罪ともあり、別途触れる。程度問題だが飲み手にとっても一概にいけないこととは言えない、とだけ言っておこう。
味、香り、飲み方、肴等は、「純米」のつかない 吟醸酒、大吟醸酒に準ずるが、味、香りには純米酒の特徴も出る。

特 別 本 醸 造 酒
本醸造酒のうち、精米歩合を60%以下とするか、または 酒造好適米の使用率が50%を超えると、「特別」本醸造酒となる。この旨表示があるのですぐわかる。
特別純米酒とともにお奨めのアイテム。酒自体も旨いし、肴との相性もいい。
まず裏切られることはない。1.で述べた保管がよければだが。
飲み方は、本醸造酒に準ずる。

特 別 純 米 酒
純米酒のうち、精米歩合を60%以下とするか、または 酒造好適米の使用率が50%を越えると、 「特別」純米酒となる。これも表示があるのですぐわかる。
通常の純米酒に加えてこの種の酒を造る蔵はそう多くない。特別本醸造酒とともにお奨めである。
飲み方は、純米酒に準ずる。

次いで、

普 通 酒
「普通酒」という術語があるわけではない。「特定名称酒」および「増醸酒」以外の一般のお酒をいう。「一般酒」ということもある。すなわち、
精米歩合70%超、
醸造アルコール添加10%超、
糖類酸味料等を添加、
色沢・香味条件の不備、
のいずれか(もっとあるかも知れないが)に該当する酒。
アルコール添加量は白米1トン当たり500リットル程度(アルコール分30%濃度)が普通といわれている。
原材料表示に「糖類」の文字があれば問題なくすべて普通酒、前述の「米だけの酒」もほとんど普通酒である。いま日本酒の7割以上は普通酒である。
酒質は千差万別、特定名称酒の条件にほんの少し届かないだけのものから、たっぷりといろいろ添加したものまで、ピンからキリまで。自分の舌で評価するしかない。
よく飲む(飲まされる)酒だから、無関心でいいはずがない。いい酒も随分ある。時間がかかっても自分に適うものを選びたい。
普通酒からいい酒を選ぶのは難しくない。代わりの酒は山ほどあるので、まずいものを切り捨てればいいのだから。
今何というお酒を飲んでいるのか、いつも確認する癖をつけたい。出鱈目な安酒を出す店も少なくないのだ。
飲み方は特に選ばないが、特徴によって特定名称酒のお酒に準じる。一般にお燗をすればお酒の特徴がよく出る(良くも悪しくも)。

4.他にもいろいろな名前の酒があるが‥‥  ――多様なお酒

他にもお酒にはいろいろ旨そうな名前がつけられている。
「生一本」を除いて、前の特定名称酒の分類とは別の概念の名称である。
例えば、生貯蔵酒でも吟醸酒も本醸造酒もあるし、普通酒もある、といった具合である。
分類に決まりなどないので、勝手に特徴ごとに区分して説明したい。

[割り水しない酒] 

原  酒(げんしゅ):
醪(もろみ)を搾ったもの。通常はアルコール分を15度前後にするため加水(「割水(わりみず)」)するが 出荷するまで一切加水しないものを原酒という。一般にアルコール度18~19度と高い。
水で割らなければ原酒というだけのことで、品質の良否には関係ない。オンザロックでも楽しめる。

[火入れによる違い] 

生  酒(なまざけ、なましゅ):
醪(もろみ)を搾った後に一切加熱処理(火入れ)しない酒のこと。搾りの後5℃~-5℃程度の低温管理をする。
加水(割水)もしなければ生原酒という。
冷やして飲むのが普通だが、生酒は腐敗する可能性も高く、常に低温で貯蔵しておくこと。味わいは、米本来の旨味は少ないが、荒っぽさの中に生酒特有のフレッシュな味とフルーティーな香りが特徴。夏にはその若さ、瑞々しさが生きる。
日本酒は熟成させてこそ旨味がでる。生酒は加熱処理しないから熟成期間が短いものが多い、流通過程での取り扱いも心配であり、「生」信仰はほどほどにしたい。

常温生酒(じょうおんなまざけ):
生酒のうち精密濾過し酵素活性をほとんどなくしたもの。ビールでいえばビン生。

生貯蔵酒(なまちょぞうしゅ):
生酒との違いは、火入れ(加熱処理)を一度すること。醪を搾った後火入れせずにそのまま貯蔵して、瓶詰の段階で火入れした酒。「生」のままで「貯蔵」しておいたという意味。ただし、貯蔵期間が極めて短く、酒が出来てすぐ熱処理して瓶詰めする「一回火入れ酒」というべきものが多い(らしい)。「生貯」の爽やか感は、貯蔵による熟成が少ない(ない)ことによると思ったほうがよい。
瓶詰段階で殺菌されるため常温で貯蔵できる。
生酒同様、普通は冷やして飲む。フレッシュな香りを楽しめる。さっぱり感を出すためか、アルコール度数は13~14度とやや低めのものが多い。

生詰・生詰め酒 (なまづめ・しゅ):
生貯蔵酒とは逆に、醪を搾った後に一度だけ加熱殺菌(火入れ)して貯蔵熟成し、瓶詰段階の火入れは行わない酒。熟成するために夏を越す場合など「生」のままで貯蔵しては腐敗の危険があるため火入れするともいえるが、火入れをして熟成した酒は旨みが出てくるということが、狙いとしては大きい。「生」の名がつくお酒ではフレッシュでなおコクがあり、お奨めである。このところ人気が出てきた「冷(ひや)おろし」は生詰酒である。

冷おろし・冷卸し (ひやおろし):
早春までに造られた酒を火入れして貯蔵・熟成させ、夏を越して秋の外気が冷える頃、そのまま火入れせずに瓶詰されて出荷する酒。生詰め酒のひとつ。新酒に比べ荒々しさがなくなり、深い旨みのある味になる。香気もいい。「ひと夏越した酒は旨い」と言われるが、中でもこの酒が特にいい。9月、10月が旬である。(2005年ごろから重陽の節供=9月9日に発売されるようになったが、が、もともとは秋彼岸ごろに売り出し開始だった)

凍 結 酒 (とうけつしゅ):
醪を搾った後、新酒(生酒)を直ちに氷点下20℃以下で凍らせ、氷点下5~10℃で保存したもの。通常凍らせたまま流通する。小生、一度しか飲んだことがない。冷たくて(当然!)さっぱりしていたように思う。

[生ではない「生」?] 

生 一 本(きいっぽん):
自社の単一の酒蔵(さかぐら)で造った「純米酒」をいう。同じ産地でも他社のものは勿論、自社であっても別の酒蔵で造ったものを混ぜたものは生一本ではない。灘の生一本が有名だが灘の専売特許ではない。
この条件に適った酒を生一本と「表示できる」のであり、義務ではない。一箇所しか酒蔵がない酒造業者がほとんどなので「純米酒」は多くは生一本ということになるが、純米酒の中でも特徴のある自信作を生一本と称している場合が多い。

[搾りかたで違う]

荒 走 り(あらばしり):
搾る段階(上槽)で、酒袋を槽(ふね)に置き、圧力をかけずに自然に流れ出てきた最初のお酒。一番美味しいといわれるところ。
ほとんどのお酒は醪自動圧搾機で搾られるが、高級酒は槽という手搾りの機器で搾ることがある。酒袋から荒々しく走るように出てくるお酒というイメージだろう。
圧力をかけない段階で出るのでアルコール度はやや低くすっきりした綺麗なお酒である。
ちなみにこの後に搾られるお酒は、「中取り」、「押切り」と呼ばれるが、「中取り」を称するお酒もかなりの水準の佳酒といっていい。例えば「中取り純米大吟醸」。
新米で醸造したお酒を「新走」(あらばしり)ともいうが、こちらは取れ立て新酒、といった意味で概念が違う。平仮名で書かれているときはじっくり見てください。尤も値段が大分違うが。
厳密にいえば違うだろうが、雫酒(しずくざけ)と称する蔵元もある。

雫  酒(しずくざけ):
槽(ふね)や機械を使わずに、「首吊り(くびつり)」(そうだろうけど嫌な言い方ですね)あるいは「袋吊り」という、醪を入れた袋を吊るして加圧しない方法で搾られたお酒。
重力だけで静かに滴る雫(しずく)というイメージ。
味はさわやかでマイルド、かつコクがあり、香りはフルーティという特徴を持つ最上級酒。ほとんどが大吟醸である。日本名門酒会のブランド名。

にごり酒(にごりざけ):
(もろみ)の中の蒸し米や米麹の粒を細かく砕き、目の粗い布や金網で漉して滓(おり)を残した、白く濁った清酒。搾ったまま「おり引き」(おりを沈殿させ上澄みをとる)をしないもの、上澄み酒をとった後に底に残る酒等いろいろある。
多くは加熱殺菌するが、瓶詰め時に加熱殺菌しないものは酵母が生きているので「活性清酒」といい、炭酸ガスを含み口当たりが爽快なのが特徴。冷やして飲むのがいいが、オンザロックもおすすめ。
いずれもやや甘味が強く、アルコール度数もやや高めで独特の舌触りと喉越しがある。冷蔵庫に保存するなど、保管には特に配慮が必要。
ドブロクとは違う正規の「清酒」。

[製法が違う]

貴 醸 酒(きじょうしゅ):
仕込みの際、水の代わりにお酒を使って(仕込み水の半分を清酒で置き換える)造ったもの。また、いったん搾ったお酒に再び新しい麹を入れてさらに醸造したお酒をいう。
酒質は、初めからアルコール分の高い状態で発酵が行われるため、非常に濃醇で甘口で、清酒とは思えないものとなる。酸味も若干多めになる。
通常出荷まで2~3年の熟成期間をおくので老香という熟成香がある。
食前酒に最適。少量を嗜む酒なのであまり酒の飲めない人にも奨められる。

[新しい・古い]

新  酒(しんしゅ):
その醸造年度内(BY、7月1日~翌年6月30日)に造られたお酒。
新酒は普通、秋の初めに醸造したものが暮から正月に、冬に醸造した酒が春から初夏に出荷される(最低3カ月の熟成は必要)。
一般的には日本酒はひと夏越してから販売することが多く(新酒との混和を含めて)、前醸造年度にできたお酒でも秋に売るときに“新酒”としている場合もある。厳密ではないが感覚的にはおかしくない。

古  酒(こしゅ):
一般的には長期間貯蔵熟成させ、独特の味を出したお酒。香りや味に落ち着いた、まろやかな味わいをもっている。紹興酒のような味やブランデーのような香りを持つものもある。
長ければいいというものではない。長く置いていいものかどうか、その酒によっ違うし、蔵としても結果がどんなものになるか必ずしも事前に把握できているわけではないようだ。
この長期貯蔵熟成酒を古酒いうのとは別に、酒づくりの現場では「新酒」との対比で、醸造年度が変わるとそれ以前に造られたお酒をすべて「古酒」と呼ぶ。
吟醸酒は熟成にも時間がかかり(1~2年)、この意味ですべて古酒といっていい。
1年古酒から10年以上物と、いろいろな「古酒」があり、使っている状況によって意味が異なる。

熟 成 酒(じゅくせいしゅ):
古酒とほぼ同義に使う。蔵で一夏以上越させたもの。
近年、数年寝かせた熟成酒に人気がある。芳醇な香りと深い味わいがあり、これが日本酒か?と思うほどの酒が多いが、当たり外れもまた多い。
瓶詰めしたものはいくら置いても熟成しない。劣化するのみ。ただし生詰め酒などで、冷蔵庫に保管しておけば変った旨みが出るものもない訳ではない。

大 古 酒(たいこしゅ):
普通の古酒に対し、2~3年以上貯蔵したものは、特に大古酒、古々酒と呼ばれることがある。低温で3~10年程度の長期熟成を行うものともいわれ、厳密な定義はない。

秘 蔵 酒 (ひぞうしゅ):
多くは低温で5年以上10年程度までの長期熟成を行い、琥珀色で芳醇な味わいの酒をいうが、これも厳密な定義はない。
長く熟成したお酒は、味の濃い料理に合い、食後酒によい。

[その他]

樽  酒(たるざけ):
「木質の樽で貯蔵し、木香(きが)のついた清酒」と定められている。一般的には杉樽が使われる。鏡割りのときなどに使う樽酒がいいが、瓶詰め酒も出ている。中身は本醸造酒が多いが、なにを詰めるかは定義上関係ない 。木香に独特の風味があり、これをいいと思うかか否かはあくまでも個人の好みによるが、冷えた樽酒は清々しくて旨い。燗をしてはいけないわけではないが(予想したより香りが邪魔しない)、通常は冷やして飲む。

山  廃(やまはい):
生もとを造る最初の段階で行う「山卸し(やまおろし)」という櫂(かい)で米をすりつぶす工程を省いた「卸し止もと」を山廃もとという。「山廃」という表示をした酒は、この酒母を用いて造った酒。生もと系の酒は腰の強いどっしりした重厚な味わいを持つといっていい。
日本酒造りの元となる酒母には、
・既成の乳酸(乳酸ではない)と純粋培養した酵母で造る「速醸系酒母」

・天然の乳酸菌・清酒酵母を取り込んで造る「生もと系酒母」
がある。
後者はより自然な方法といえ、全工程手抜きしない「生もと」と、山卸しをやめた「山廃もと」に分けられる。どちらがいいとは一概には言えない。
これを理解するにはどうしても日本酒の製造工程を知っておく必要がある。
ここに至っては、日本酒はどのようにして造られるかをざっとでも勉強しなければなるまい。
今は、「山卸し廃止」= 手の込んだ造りの酒で重厚な味わいを持つ、と暗記してもらおう。
なお、講義資料日本酒の基礎知識の 日本酒製造のながれ をご覧になれば少しは理解が進むかもしれない。

本造り(ほんづくり)・本仕込み(ほんじこみ):
両方とも本醸造酒と同義で使われることが多い。蔵元の「自信作」であるを訴えたいのであろう。
これらの表示はあるものは必ず特定名称の表示(例えば本醸造酒)が併記されている。お確かめ願いたい。
なお「本仕込み」と表示する純米酒もないわけではない。

冷  酒(れいしゅ):
「冷酒」と呼ばれる種類の日本酒があるわけではない。冷たくしたお酒というだけ。あえていえば、冷やして飲むことが推奨されているお酒。
店の人が「冷酒(れいしゅ)」を勧めたら必ず酒の種類を聞くこと。生貯蔵酒のことが多いが、生酒(きわめて少ない)、吟醸酒もあるし、ただ冷やしただけの普通酒まである。
付け加えるのも野暮だが、「冷酒」は「ひやざけ」とも読む。これは冷さずお燗せず(常温)のお酒で、「ヒヤ」「もっきり(盛っ切り)」などとも呼ばれる。一升瓶からそのまま注いだコップ酒も時により悪くはないが、味わう酒ではない。
と言うわけでして、種類だけでも覚えるのは大変。
一読後、何か試して合うものを探してください。
「山廃」の説明が難しかった。やはり日本酒はどうやって造られるかを知らなければ、好き嫌い と 知識の暗記 になってしまう。